──紋様が示した刻限。
猫猫は壬氏、高順とともに
貯蔵庫へ向かっていた。
戸口で、高順が猫猫を制する。
「小猫、ここは私が」
すると、戸の向こうから
啜り泣きが聞こえてくる。
高順が戸を開けると、
積み上げられた荷の奥、
月明かりの下に、
一人の女が立っていた。
その傍らには、
使用人らしき者が静かに控えている。
(やはり怨霊などではない)
女の肌は、ひどく荒れ、
乾いてくすんでいた。
猫猫が声をかけると女は顔を背け、
袖で頬を隠した。
(なるほど。肌を見られたくないのか)
「お二人は外でお待ちいただけますか」
猫猫が女へ視線を向けると、
高順はすぐに意図を察したようだった。
「参りましょう」
「しかし──」
壬氏は不満そうに眉を寄せたが、
高順に促され、渋々外へ出た。
猫猫が事情を尋ねると、
女はぽつぽつと話し始めた。
曰く、彼女は肌の変化を気にして、
人前に出られなくなったのだという。
しかも、夜ごと聞こえる泣き声は
怨霊の声と噂され、
それを耳にする度、
肌の調子はさらに悪くなっていった。
そうしてとうとう
誰にも会えなくなったのだそうだ。
女は、誰かの目に留まることを願い、
街のいたるところに紋様を書き残すよう、
使用人に命じたのだという。
(まさか、あの紋様が
助けを求めるためのものだったとは)
「この肌は呪われているのです。
どうか、この呪いを解いては
いただけませんか」
猫猫は女の肌を改めて観察する。
確かに荒れてはいるが、
怨霊の仕業などではないだろう。
「呪いかどうかは、
話を聞いてから判断します。
肌が荒れてから、何をしました?」
すると、女は懐から
あるものを取り出した。
「すべてここに記してあります」
それは日々の出来事が
記されている日記だった。
猫猫は日記の一頁目を開く。
(この中に、肌荒れの
本当の原因があるはずだ)